【未定】イワクラセミナー4

天文考古学の夜明け:天文考古学遺跡

セミナー4の内容

イワクラセミナー4回目は、縄文時代の岩石遺構について、なぜ人工物と言えるのかについて、天文考古学的観点から学術的に丁寧に説明します。

これまでの日本には天文学で遺跡を研究する天文考古学という学問がありませんでしたが、2019年に日本天文考古学会が設立されてから、この分野の研究も進み始めました。日本天文考古学会の常務理事でもある講師がこの状況についても解説します。

 

 

天文考古学の基礎知識/考古学者が誤認した大湯環状列石/日本の天文考古学遺跡の紹介(金山遺跡、白石の鼻巨石群、尾道岩屋山、神谷太刀宮遺跡など)/世界の天文考古学遺跡について太陽との関係を分類

 

天文考古学は、遺跡の研究に天文学を応用する学問分野です。地球の地軸が23.4度傾いているため、太陽は毎日異なる軌道を描き、低い軌道をとると寒さが増し冬が訪れます。この現象について、古代人は太陽が衰えていくと解釈しました。そして、空に最も短い時間しか滞在しない冬至の日に、太陽が再び力を取り戻すよう祈願するために、太陽の動きを観察する必要がありました。また、太陽のサイクルの節目を特定することは、農作物の栽培に不可欠であり、人々の生活リズムを整えるためにも太陽の軌道の観察は必要でした。さらに、為政者にとっては政治イベントを行う日となり、太陽の軌道を観察し予測するために岩石を用いて観測装置を作成したと考えています。これが天文考古学遺跡です。

近年、日本全国で天文考古学的遺跡が次々と発見されています。これまでなぜ発見されなかったのか不思議に思いますが、その原因は天文と遺跡を結びつける学問が日本に存在しなかったからです。日本天文考古学会の設立により、これらの遺跡がオカルト的な話題ではなく、科学的に扱われるようになりました。

イワクラセミナー4では、近年発見された岐阜の金山遺跡、愛媛の白石の鼻巨石群、尾道の岩屋山、神谷太刀宮遺跡などの天文考古学遺跡を数多く、時間の許すがぎり紹介します

 

天文考古学は、天文学で遺跡を研究する学問ですので正しい天文の知識が必要です。セミナーでは、その基礎知識についても少しお話します。皆さんが地図を見た時に上が北になることは知っていると思いますが、方位磁石が指す北とは異なることを知っているでしょうか。方位磁石の北(磁北)は地球の磁場を指すもので、地図上の北(真北)とは異なります。しかも磁北は移動しているため一定でもありません。したがって天体との関係を議論するには正しい方位(真北)を知る必要がありますので補正しなければなりません。

その地図の使い方にも注意しなければならない所があります。メルカトル図法の地図上で直線を引いて直線に神社が並んでいると主張されているのを目にしますが、メルカトル図法の地図上での直線は、2点間の最短距離を意味しません。これはセミナー3で詳しくお話ししました。

また、地球の地軸が23.4度傾いているために、太陽は毎日同じ軌道を通らずに1年周期で軌道を変えます。このために四季が存在しています。一方、星の配置は、地球の歳差運動により25800年の周期で変わっていきます。長い年月を経た遺跡を検討するには、この歳差運動を考慮する必要があります。つまり昔の星空は今見えている星空とは異なっていたのです。例えば地球から見た太陽の通り道に位置する星座を十二に分けて誕生日を割り当てたのが西洋占星術ですが、2000年前に設定された星座の位置は、歳差運動によって、1星座分ズレてしまっています。つまり4月1日生まれの人は牡羊座ですが、現在の4月1日の太陽方向には牡羊座は無く、魚座になってしまっているのです。

 



世界遺産となった秋田県の大湯のストーンサークルには、日時計状配石があり、中心とこの日時計状配石を結ぶと夏至の日の入り方向と一致することが川口重一氏によって1956年に発表されました。つい最近まで、テレビなどでこの説が取り上げられていました。講師は、2022年3月に日本天文考古学会誌Vol.3に「大湯環状列石の岩石配置図に関する検証」を発表してこの説を科学的に否定しました。川口重一氏が使用した大湯環状列石の岩石配置図の方位が間違っていたのです。考古学者が「方位」というものをいい加減に扱っていた証拠です。正しい図で見ると、万座の日時計状組石は289°となり、BC2000年の夏至の日の入りの302°とは13°も異なっており、万座の中心と万座の日時計状組石の方向は夏至の日の入りを示しているとは言えない。という結論になりました。筆者の発表以後は、テレビとかで取り上げられることは無くなりました。太陽の軌道を観測していた岩石配置を探している天文考古学にとっては、残念な結果となりましたが、この例のように、考古学者が行ってきた結論に対し、科学的な検証を行うのも日本天文考古学会の使命です。


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